Gaetano Gadda 「ガエタノ・ガッダ」(1900〜1965)は、イタリアのソルガという街で生まれ、19歳の時に、ソルガから20キロほど離れたマントーヴァで活躍する「ステファノ・スカランペラ」の唯一の弟子として弦楽器製作を始めます。
師匠の「スカランペラ」は、この時すでに76歳と高齢で、健康にも様々な問題を抱えていました。そのため「スカランペラ」は、少しでも早く「ガッダ」が良い作品を製作できるようにと、サイド・バイ・サイドで、すぐ隣に並んで共に弦楽器を製作し、彼の技術を余すことなく教えたのです。



その結果、才能もあり器用だった「ガッダ」は、わずか数年で、一定以上の素晴らしい作品を製作できるようになります。そして1924年には、持病が悪化した「スカランペラ」とビジネスコントラクトを交わし、工房と弦楽器製作に使用する道具の全てを、スカランペラから譲り受ける代わりに、作品の全てを「ガッダ」が製作することにしたのです。そのため、1924年以降の「ステファノ・スカランペラ」のオリジナルラベルが貼られた作品は、すべて「ガエタノ・ガッダ」の製作した楽器となります。
しかし、この期間は1年足らずと非常に短く、1925年に「ステファノ・スカランペラ」は82歳で他界しました。





工房を引き継いだ「ガッダ」は、その後も一人で「スカランペラ」スタイルの楽器を製作し続けます。その作品は「スカランペラ」と間違えるほど良く似ていて、音も良く、当時から非常に人気があり、とても売れていたようです。



そして、1930年代半ばからは、スカランペラ以外のイタリアの銘器を研究するなどし、様々なスタイルを模索します。その結果、1930年代後半頃には、「ガルネリ」をコピーした作品や、「バレストリエリ」のコピーをした作品なども製作し、彼の黄金期を迎えたのです。
とても器用だった「ガッダ」は、仕上げのニスも、綺麗な一色で仕上げたフルヴァーニッシュと、アンティーク仕上げの両方を高いレベルで製作しました。
この頃の作品には、「ガエタノ・ガッダ」の頭文字、“gg”マークの焼印が、裏板のボタンや横板のエンドピンの下に押された作品がしばしば存在します。





1950年代になると、息子の「マリオ・ガッダ」(1931〜2008) が弟子として工房に入り、親子で共に弦楽器を製作します。この「マリオ」もまた父親に勝るとも劣らぬ才能と器用さを持ち合わせていて、すぐに素晴らしい作品を製作するようになります。
そして、1965年に父「ガエタノ」が他界した後には、「スカランペラ」や「ガエタノ・ガッダ」のコピー作品は元より、クレモナの銘器「ガルネリ」や「ストラディバリ」のコピー、マントーヴァのオールド楽器「バレストリエリ」や「ダラリオ」のコピー、さらにはセミオールドの銘器「ロッカ」、モダンイタリアの楽器「ファニオラ」や「ガリンベルティ」、「オルナッティ」、「ポッジ」などの作品をコピーした楽器を数多く製作しました。
これほど器用に多くのコピー楽器を製作したイタリアの製作家は前代未聞といえます。




また、「マリオ・ガッダ」は、ビジネスの才能もあり、1970年代からは、弟子の「テストーニ」が製作した楽器や、無名の製作家に外注として製作させた楽器に自身のラベルを貼って、価格を変え、それらを数多く販売していました。
そのため、ビジネスはとても成功したようですが、特に後期の「マリオ・ガッダ」工房の作品は、まさに玉石混合様々な作品の出来不出来があり、弦楽器製作家としての「マリオ・ガッダ」のブランドを、自身で汚してしまう結果になったことは否定できません。
しかしながら、「マリオ・ガッダ」自身が製作した楽器の中には、見事と言える素晴らしい作品が数多く存在することも事実であり、それらをしっかりと選別することが極めて重要と言えるでしょう。
弟子の「テストーニ」が製作した作品もまた、素晴らしい作品が数多く存在します。



なお、「マリオ・ガッダ」は、1999年にアルツハイマーを発症して、他界する2008年までの間は弦楽器の製作はしておりません。しかしながら、この間にも、「マリオ・ガッダ」の妻の兄弟と、その娘婿によって外注依頼されたイタリア以外の国の楽器が、「マリオ・ガッダ」工房の作品として販売されております。



Mario and Gaetano Gadda




今回ご紹介する1921年製の「ガエタノ・ガッダ」の作品は、弦楽器製作を始めてから3年目の作品とは思えぬほど見事な作品で、仕上げのニスが、師匠「スカランペラ」と全く同じものを使用していることもあり、「スカランペラ」の作品と見間違えるほどの出来栄えと言えます。しかしながら、細部まで細かく見ると、細工や縁周りの仕上げが少し無機質で、「スカランペラ」独自の味や個性まではコピーしきれていない事が見て取れます。
また、1943年製の作品は、黄金期を迎える時期の見事な作品で、1921年製の「ガルネリ」にインスパイアされた「スカランペラ」コピーの作品とは違い、「ガエタノ・ガッダ」自身による「ガルネリ」の研究の結果、製作された非常に完成度の高い「ガルネリ」コピーの力強い作品で、フルヴァーニッシュで仕上げられた、大変素晴らしい作品となっております。

そして、1981年製の「マリオ・ガッダ」の作品は、数ある「マリオ・ガッダ」工房の作品の中でも、突出して見事な美しい正統派の作品で、楽器のフォルムやアーチ、パフリングや縁周りの細工、仕上げのニスなど、その全てにおいて弦楽器製作家としての「マリオ・ガッダ」のセンスと才能を垣間見ることのできる作品ではないでしょうか。















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参考文献
「Universal Dictionary of violin & bow makers」  著 William Henle
「Liuteria Itariana」  著 Eric Blot